2020年09月11日
配偶者居住権は,配偶者の居住権を保護するために特に認められた権利であり,帰属上の一身専属権です。そのため,配偶者居住権は,譲渡することができず(民法1032条2項),配偶者が死亡した場合には当然に消滅します(1036条で準用する597条3項)。
配偶者居住権は,使用収益権限のみが認められ,処分権限が認められないため,所有権よりも低廉な価額で評価されます。そのため,配偶者は,所有権ではなく配偶者居住権を取得することにより,それ以外の財産をより多く取得することができるようになりました。また,従前は,配偶者が所有者との間で賃貸借契約を締結することにより居住権を確保することが考えられましたが,その場合,所有者が賃貸借契約の締結に応じない可能性がありました。しかし,配偶者居住権は後述のように遺言によって配偶者に取得させることができますので,賃貸借契約を締結する必要がなくなりました。
配偶者居住権の成立要件は,①配偶者が相続開始のときに被相続人所有の建物に居住していたこと,②その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割,遺贈又は死因贈与がされたことです(1028条1項,554条)。遺贈は,遺言によってすることができますので,遺言によって配偶者居住権を配偶者に取得させることができることになります。
ここでいう「配偶者」には,内縁の配偶者は含まれません。
配偶者が配偶者居住権を第三者に対抗するためには,配偶者居住権の設定の登記をしなければなりません(1031条2項で準用する605条)。
配偶者のために安定的な居住権を確保したいとお考えの方は,遺言の中に,配偶者居住権を配偶者に遺贈する旨の条項を入れてみてはいかがでしょうか。