2021年06月03日
共同相続人は,自己の相続分を譲渡することができます。民法905条が遺産分割前に相続分の譲渡ができることを前提とした規定であるため,遺産分割前に相続分の譲渡ができると解されています。
相続分の譲渡は,譲渡の時に効力を生じます。
相続分の譲渡をすると,相続分の譲渡人は遺産分割手続における当事者としての地位を失い,その譲受人はその当事者としての地位を承継取得します。
共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たります(最高裁平成30年10月19日判決・民集第72巻5号900頁)。
つまり,無償による相続分の譲渡は,その相続分に財産的価値がない場合を除き,その譲渡人の相続において,特別受益として扱われることになります。
相続分の譲渡は,内縁の配偶者などの第三者を遺産分割手続に関与させたい場合,自己が遺産分割手続に関与したくない場合,多数の共同相続人がいる事案において当事者の数を減らして遺産分割手続を円滑に行いたい場合などに行われることがあります。