2020年10月22日
遺留分権利者は,遺留分侵害額請求権を行使することにより,受遺者又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭債権を取得します(民法1046条1項)。
遺留分侵害額請求権は,形成権であり,遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈を知った時から1年間行使しないときは時効により,相続開始の時から10年間を経過したときは除斥期間の満了により,それぞれ消滅します(1048条)。
遺留分侵害額請求権の行使により生じた金銭債務は,期限の定めのない債務であり,遺留分権利者が受遺者又は受贈者に対して具体的な金額を示してその履行を請求した時点で履行遅滞に陥ることになります(412条3項)。
もっとも,遺留分減殺請求権の行使と金銭債務の履行請求は同時に行うことが可能です。
遺留分侵害額請求権の行使により生じた金銭債権は,遺留分侵害額請求権の行使日が令和2年3月31日以前である場合には10年間,遺留分侵害額請求権の行使日が同年4月1日以降である場合には5年間の消滅時効にかかります。
裁判所は,受遺者又は受贈者の請求により,金銭債務の全部又は一部につき相当の期限を許与することができます(1047条5項)。裁判所が期限を許与した場合には,当該期限の許与がされた金銭債務の全部又は一部について,遡及的にその弁済期が変更されたことになります。